ASDは血液検査で診断できる?

ASDは血液検査で診断できる?

精神科疾患の他の科の疾患との一番大きな違い、それはバイオマーカーが無いことです。

バイオマーカーとは、例えば、糖尿病であれば血糖やヘモグロビンA1c、高脂血症であればコレステロールや中性脂肪のように、検査して計測すれば特定の疾患を推定・診断できる血液中の物質を言います。

例えば、「今日の血液検査でAが高かったのでうつ病ですよ」、「以前は300でしたが今日は100ですから大分改善しましたね」、みたいな会話が精神科では無いわけです。なので、研究者は何がバイオマーカーとして使えるのかを血眼になって探しているのですが、精神疾患では感染症由来のものを除けば何1つありません。

特に遺伝子研究に関して、今日紹介する論文の本文から持ってくると、
「ASDバイオマーカーを調査している多くのゲノムワイドな研究はほとんど結果を出せずに失敗し、そのほとんどが個々の研究に特異的で終わってしまう。ASDを正確、そして差別的に診断することができる『予測可能なバイオマーカー』を発見するために、より良いフレームワークが明らかに必要」。

要するに、ASDの遺伝子研究は全て失敗に終わっており、バイオマーカー検索は何か別な発想がないと成し遂げられない、ということです。

今日紹介するのは、血液検査から測定可能な葉酸代謝経路に関わる検査値に特別な操作を加えることで、ASD児群と対照群(定型発達児)を的中率97.6%で鑑別できたというもの。

数値だけ見ると、すごい!と言いたくなりますが、解析対象数が少ない点(ASD83例、定型76例)、年齢範囲が狭い(3-10歳)などを考えても、まだ検討が必要なことには注意が必要です。明らかに同じ手法を用いて、もっと多くの対象者、そしてもっと多くの地域(研究はアメリカ)で結果を得なければ、結論は出せません。

さて、本研究は確かにすごく興味深いのですが、私自身は精神疾患のバイオマーカー探索は、はっきり結論が出なくてもいいかなあと思っている方です。学問的興味はありますが、人間の脳の働きはすごい複雑系なので、ある1つ2つの指標で目の前の人をこの診断だって特定したり否定したり、ほんとに可能かなあと懐疑的だったりします。ともあれ、今後の研究展開には注目したいですね。

                                 ライデック代表 松澤大輔