精神科疾患の他の科の疾患との一番大きな違い、それはバイオマーカーが無いことです。
バイオマーカーとは、例えば、糖尿病であれば血糖やヘモグロビンA1c、高脂血症であればコレステロールや中性脂肪のように、検査して計測すれば特定の疾患を推定・診断できる血液中の物質を言います。
例えば、「今日の血液検査でAが高かったのでうつ病ですよ」、「以前は300でしたが今日は100ですから大分改善しましたね」、みたいな会話が精神科では無いわけです。なので、研究者は何がバイオマーカーとして使えるのかを血眼になって探しているのですが、精神疾患では感染症由来のものを除けば何1つありません。
特に遺伝子研究に関して、今日紹介する論文の本文から持ってくると、
「ASDバイオマーカーを調査している多くのゲノムワイドな研究はほとんど結果を出せずに失敗し、そのほとんどが個々の研究に特異的で終わってしまう。ASDを正確、そして差別的に診断することができる『予測可能なバイオマーカー』を発見するために、より良いフレームワークが明らかに必要」。
要するに、ASDの遺伝子研究は全て失敗に終わっており、バイオマーカー検索は何か別な発想がないと成し遂げられない、ということです。